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入院は2週間ほどだった。
その間中、豪太は、毎日、遼を呼びつけた。
本当は、そんなに来てもらう必要はなかったのだ。
来てほしいと言えば、何は置いても、彼は来てくれた。
面会時間は、20時までだ。
5分ほどで病室を追い出される日もあった。それでも毎日、顔を出した。
……してみると、今度の会社は、それほど残業がきついわけではないのだな。
豪太は思った。
もともと能力のある人間だと、パワーネットの幸崎は言っていた。残業が多いのは、許容以上の仕事を引き受けてしまうからだ、きちんと自己管理さえすれば、もう少しましな働き方ができるんじゃないか、と。
転職して残業が減ったということは、もう、自分を苛めるような無茶な働き方はしていないということだ。
ひとつの、安心材料ではあった。
病院へは、パジャマの替えやタオルなど、必要なものを持ってきてくれる。
朝、それらを持って、出社するのだという。そして、会社帰りに病院へ寄る。
パジャマや下着は、いつも洗い立ての洗剤の匂いがした。
自分が使っているのとは違う洗剤の匂い。
部屋干しだぞ、洗濯は夜だからな、と、ぶっきらぼうに言っていた。
今日も、自分のもとへ来てくれた……。
それを確認するだけの為に、豪太は彼を呼び続けた。
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