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……優しい人。
でも、あの人は、自分には、ちっとも優しくなんか、ない。
距離を置かれ、突き放されてる。
なぜだろう。
なぜなんだろう。
誰にでも優しいのだとしたら……、
あの人が優しくないのは、
自分と、
……蒼。
唐突に、豪太は理解した。
自分は蒼と、同じ箱に入れられている!
あの人は、蒼のことが好きだった。
その蒼と同じ仕打ちを、今、自分はあの人から受けている。
昔、好きだった人と。
同じように。
……。
素直に喜べない。
……太田さんごと抱きとめてやる。
確かに自分はそう言った。
そんなの、大嘘だ。
自分が、自分だけが、あの人から愛されたい。
「お兄ちゃん? お兄ちゃん!」
美純の声が大きくなった。
「あ? なに?」
「何じゃないよ。退院の日、私、仕事で来れないけど?」
構わない、と、豪太は答えた。
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