雨の週末

22/27
前へ
/273ページ
次へ
**  今、何時なのか。  それより、何日なのか。  時間の感覚がなくなってしまっている。  途中で意識を手放してしまった気がする。  ……起き上がって、服を着て。  ……部屋を出て、そして。  自分はこの男と、離れられるのだろうかと、遼は思った。  離れて生きていけるのか。  遼を胸にすっぽりと収め、豪太は眠っている。  僅かな動きを感じ取ったのか、腰に回された両腕に、ぎゅっと力が入った。  起こしてしまったかと窺うと、瞼はしっかりと閉じられていた。  ……そういえば、こいつ、一晩中、眠らなかったって。  眠らずに、欲望と戦ったんだと、偉そうに言っていた。  「行かないで」  低い声が訴えた。  眉間に、苦しそうな皺が寄っている。  今度こそ本当に起きたのかと思ったら、寝言だった。  遼は身を起こし、豪太の額にかかった髪をよけた。  眉間の皺に指を当て、伸ばすように撫でる。  耳に口を寄せ、甘く耳朶を噛んだ。 「どこにも行かないよ」 小声で言った。  多分……、  ……今は。  ちょっとだけ、この男に甘えてもいいのではないか。  この男が、自分を必要としている間だけ。  眠っている男の口元が、僅かに緩んだような気がした。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

351人が本棚に入れています
本棚に追加