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今、何時なのか。
それより、何日なのか。
時間の感覚がなくなってしまっている。
途中で意識を手放してしまった気がする。
……起き上がって、服を着て。
……部屋を出て、そして。
自分はこの男と、離れられるのだろうかと、遼は思った。
離れて生きていけるのか。
遼を胸にすっぽりと収め、豪太は眠っている。
僅かな動きを感じ取ったのか、腰に回された両腕に、ぎゅっと力が入った。
起こしてしまったかと窺うと、瞼はしっかりと閉じられていた。
……そういえば、こいつ、一晩中、眠らなかったって。
眠らずに、欲望と戦ったんだと、偉そうに言っていた。
「行かないで」
低い声が訴えた。
眉間に、苦しそうな皺が寄っている。
今度こそ本当に起きたのかと思ったら、寝言だった。
遼は身を起こし、豪太の額にかかった髪をよけた。
眉間の皺に指を当て、伸ばすように撫でる。
耳に口を寄せ、甘く耳朶を噛んだ。
「どこにも行かないよ」
小声で言った。
多分……、
……今は。
ちょっとだけ、この男に甘えてもいいのではないか。
この男が、自分を必要としている間だけ。
眠っている男の口元が、僅かに緩んだような気がした。
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