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「待って下さい!」
その時、野次馬たちをかき分けて、一人の青年が出てきた。
スポーツブランドの黒っぽいジャケットに、デイパックを軽く肩にかけている。
がっしりした体格の、背の高い男だ。
服装のせいかもしれないが、自分よりも若く見える。
男はちらりと遼に流し目を寄越した。
……な、なんだよ。
思わず遼は身構えた。
「柳ヶ瀬さんは痴漢なんかしてませんよ」
男は言った。
……あれ?
……俺の名を知ってる?
でも遼には、全然見覚えがなかった。
いや、そんなことはどうでもいい。
やっと現れた、味方だ。
力を得た思いで、自分も言い返した。
「そうだそうだ。俺は痴漢なんかしていないから!」
眼鏡女子が激しく睨み返した。
「嘘よ! この男が私のお尻を触ったの! いやらしい指で、こねくりまわすように……」
「してない!」
「そう、柳ヶ瀬さんはそんなことしていない」
力強い声で、男が援軍を出してくれた。
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