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「七星さん、無理はいけません」
「はい?」
勇瑪はいきなり七星の手を握り、真っ直ぐ瞳を見つめた。
「自分に正直に。これが簡単なようで実は難しいんです」
「はあ……」
「自分の心を偽ることが、不幸を招きやすく悪循環でしかないんです。自分の心に正直に!いいですね」
痛いくらい手を握られ、七星は困惑する。
「私も力になります。自分に正直になれば、きっと良い方へと道は開けますよ」
途端に七星の表情が明るくなった。
「ありがとうございます。なんだか、肩が軽くなった気がします」
「本当ですか?では……」
そう言うと七星は、勇瑪が話しているのを最後まで聞かず、深々と頭を下げて勇瑪よりするりと手を抜き取った。
空振りした勇瑪を残し、そそくさと長者様のもとへと行き、頭を下げたりしながら何かを話している。
(早っ…もう決心された?いやいや、善は急げだからな)
勇瑪は慌てて身だしなみを確かめる。
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