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「勇瑪様」
暫くして七星が戻ってきた。
「七星さん、では……」
勇瑪は慣れた手つきで七星の手を掬い上げる。
「あの……私、そろそろおいとまを……」
「は?」
「茶々さまが心配で……」
「へ?茶々……丸?」
未だに頭を整理しきれていない勇瑪に、七星は『はい』と頷く。
「日頃の疲れと朝晩の冷え込みのせいだと思うんですが、家に残してきたことが急に心配になってきてしまって」
「え……と…」
「勇瑪様のおかげで決心が。今日はこれで帰ります」
それだけ言うと、七星は訪れていた人々に頭を下げ、早足で立ち去ってしまった。
(そうか!可哀想に……茶々丸のヤツにずっと縛られているのか。あの野郎、クズのくせになんてマネを!どんな弱味を握っていると言うんだ?)
ギリギリと奥歯を噛み締める勇瑪には、回りの声など聞こえない。
(こうなったら七星さんを茶々丸なんかの汚い手から救い出し、都で薔薇色の生活を……)
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