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ある日、出産のために帰っていたこの村の長者様の娘が赤子を産みなさった。
長者様の初孫だったもんだから、そりゃあ喜んで喜んで……
村中に高級乾燥果実の詰め合わせを配り、村人や親類縁者を呼んでの宴を三日三晩行ったほどだ。
その中に、都で有名な若い絵師・勇瑪(ハヤメ)も初孫の姿を描くため、久しぶりにこの村にやって来ていた。
「勇瑪様ぁ、私も描いて下さいな♪」
年頃の娘達は挙って酌をするため、徳利を手に押し合った。
無理もない。
うまくいけば、憧れの都で貧乏とは縁のない暮らしができるかもしれないのだ。
ましてやピカソ虫である彼の美しさや洗練された仕草は、田舎の雄達とは雲泥の差だ。
「この村の女性は、今も昔もとてもお美しい方ばかり。私などの筆で表現しきれるか自信がありません……ああ、私はまだまだ未熟者です」
やはり世間知らずの田舎娘だ。
真に受け顔を赤らめ、キャーキャー騒ぐ。
だが勇瑪の本音は“気に入った娘と一晩遊んで都に帰る”でしかなく、盃を口にあて適当に娘達を品定めしていた。
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