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「長者様、遅くなり申し訳ありません」
その時、障子が音もなく開き、廊下で娘が一人、深々と手をつき頭を下げていた。
「七星さん、よく来てくれた。忙しいところすまなかったな」
長者様は体を揺らし娘のもとへ行き、下げている顔を上げさせる。
「とんでもないです。普段から大恩ある長者様のお祝い事、それなのに申し訳ないと……」
「いやいや、あいつが寝込んでいるってのに……」
そんな二人のやり取りを煩そうに少し顔をしかめ、勇瑪はそちらへ視線を移した。
「なっ……」
七星の姿を見て、勇瑪は持っていた盃を落としそうになった。
(う…美しい。こんな田舎であれだけの娘がいるなんて)
腰まである長くて美しい髪、見たことないほどの美貌、長い手足の仕草一つ一つが、まるで舞を舞うかのような美しく、勇瑪は思わず見惚れていた。
(この辺りの娘ではない!所作がまるで違う。あれだけの優雅さ、礼儀作法含め、都の金持ちの娘以上のことを身に付けている)
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