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勇瑪は隣にいる娘に訊ねた。
「あの方はどなただったかな?暫くこちらにお邪魔していなくて、どうもさっきから思い出せない……」
「あの人は七星さんよ。村外れの茶々丸は覚えてます?」
「茶々丸?ああ……そう言えばいたね」
(村一番の貧乏な家で、背もさほど高くなく、顔も泥臭い田舎者の、見るからに大したことはない、地味で目立たないカスでクズ同然のヤツだったな)
自分の記憶の中に僅かに思い出せた茶々丸を、まわりに気づかれないよう鼻で笑う。
「嘘みたいだけど、彼女は彼の嫁さよ」
「えええっ!?」
驚き思わず叫んだ勇瑪を、皆が不思議そうに見つめた。
「驚いた?私たちも最初はビックリしたわよ、ねえ?」
「ええ。茶々丸って気は良いんだけど、見た目もお金も……結婚相手になんて絶対無理!だから、あの茶々丸によくあれだけ美人で働き者の良くできた嫁さが来たもんだって、村中大騒ぎになったもの」
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