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「今日は夫の茶々丸もあなた様にお会いできると楽しみにしていたのですが、あいにく昨日から熱を出し寝込んでしまって……申し訳ありません」
詫びる七星に、勇瑪は『私のことなど、本当にお気になさらないで下さい』と普段の落ち着きを取り戻し、冷静に答えながらも得意の熱っぽい視線を送る。
(一晩遊ぶ娘にするにはもったいない。夫がいるからなんだ?私の魅力で、この方を都へ連れて帰り囲ってやろう)
気づかれぬよう七星を値踏みしながら、勇瑪の腹の中にどす黒いものが渦巻き始めた。
「さあ、七星さん。よかったら孫を見てやってくれ。娘によく似ためんこい顔をしておるんじゃ」
そんな勇瑪を気にすることなく、長者様に促され、七星はあっさりそちらを向いた。
(あれれ?大概の女はちょっと“コレ”をするだけでコロッと……まさか私の熱が足りないのか?)
腑に落ちない勇瑪は首を傾げたが、
「よろしいんですか?嬉しいです」
顔を輝かせ手を打って喜ぶ姿に、逆にドクンと大きく心臓が鳴った。
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