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死体を見れば見るほど、心は渇いていった。 死体を見れば見るほど、何とも思わなくなっていった。 ヒトは慣れる生きものだ。 ああ、またひとり、死んでしまった。 こうなると、生き残る人間はいったい、何人くらいなのだろう? そんなふうにしか思えなくなった。 きっと、これも症状のひとつだ。 生きる気力すら奪ってゆく。 いつの間にか蔓延していった目に見えることのない病が次々に人びとへと感染し、身体を蝕み苦しめ、終いには死に至らしめた。 いつしか考える思考力も奪われ、ぼんやりと広がる暑さですべてが蜃気楼のなかに包まれていくような感覚でいっぱいになっていた。 ここにいたら、おそらくじきに自分も死ぬだろう。 目の前に迫ってくる自分の死にさえ、緩慢でいる。 それでも死を直前にして恐怖を覚え、慌ててどこかへ逃げ惑う人の群れをただ、眺めていた。
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