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「おい!またひとり倒れたぞ!医者だ、医者を呼べ!」 「前来ていた医者、……名前はなんて言ったっけ……ほら、あのよくある名前だよ。一般的過ぎて忘れちまった。白衣を着て、眼鏡をしている……」 「そんなどこにでもいるような特徴言われてもねえ……」 「サトウでもサイトウでもタカハシでもヤマダでも誰でもいいさ。どうせ誰も治せやしないんだから。ただの治療もどきの行為をするだけだろう?無駄だね、無駄無駄」 「どいつもこいつも治療しては消えてゆくから、覚えている意味もないね」 「文句を言うなら、伝染さないでもらいたいものだな」 やいのやいの言っている中から、薄汚れた白衣を着たひとりの男がやって来た。 そう、彼がついこの間、政府から派遣されて来た医者のひとりである。 ただ、街の人びとには複数派遣された医者の区別が誰ひとりとしてついていなかった。 いつまで経っても、改善の余地は見られず、感染は拡大するばかり。 国から見放されたこの地域は、閉鎖され、隔離。 健康な人間諸共、ここで病の餌食となる。 「ハヤマは知らないか?あいつ、医師免許を剥奪されているのに、また勝手に治療行為を行なっているらしい……こんな混乱した状況でなけりゃ即逮捕だ」 「ハヤマ?ハヤマは酒しか飲んでねえよ。ときどき酔っぱらって、変わった行動をするだけさ。それももしかしたらこの伝染病の熱に侵されちまっているだけかもしれねえ」 医者は町人の意見を無視して、酒場へ入店した。 酒は殺菌効果があるとして、たらふく飲む輩が、朝から常駐していた。
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