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「ううん、私もわがままばっかり言ってた。ねぇ、今からでもデート続けない?」
奈緒は仕切り直してお誘いしてくる。
僕はこくりと頷いた。
「うん、いいよ。そうだっ、さっき路地を歩いてたらおしゃれな雑貨屋さんがあったんだ。見に行かないっ?」
「それなら私もさっきレトロな喫茶店を見つけたのっ。あと、古着屋もあったし」
「よーし、じゃあ順に回って行こうか。まだ時間はあるしね」
「うんっ」
僕の提案に奈緒は無邪気に笑いながら頷いた。そして抱きつくように僕の腕を取って体を密着させる。
今までこんな距離で奈緒と接した事がないのだが、喧嘩のあとの仲直りで距離が縮まった証拠かもしれない。
僕は照れつつも距離を取ることはしなかった。
普段なら恥ずかしくてこんな状態、保っていられないけれど仲直りした後は何故だかこのままでいたいと思った。
たぶん、一度喧嘩して離れた事で彼女の大切さが身に染みて分かったのだ。だからもっと側にいたいという思いが強く働いてこのままでいられるのだと思う。
喧嘩するほど仲が良いという意味がここで初めてわかった気がした。
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