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「もう知らない! 帰る!」
「こっちもうんざりだよ!」
人の行き交う大通りで僕らは人目も憚らず声を上げて喧嘩する。
部活帰りのテニス部やスーツ姿の社会人、オシャレな服を着た若者、紳士のようなおじいさん、とにかく色んな人達が僕らの方をチラチラ見て歩き去っていく。
何の事はない、些細な喧嘩なんだ。
昨日から綿密に計画したデート通りに今日は歩き回った、のだが。
奈緒はことごとく僕のプラン通りに動いてくれないのだ。横紙破りをする彼女に僕はついカッとなって怒ってしまった。
いやいや、僕もプランを台無しにされたからって怒りはしないよ。問題なのは彼女の身勝手さだ。
僕は事前に奈緒から行きたい場所や食事は何が良いかとか聞いて、そこからプランを練っていたのだ。
言うなれば彼女の要望を汲んだデートプランにしたのだ。
しかし当日になって奈緒は今の自分の気分を優先してここ行きたいあそこ行きたい食事はここが良い。
滅茶苦茶である。
だが。
「はぁ、」
こうして喧嘩で離れると急に冷静になる。後悔先に立たず。謝まろうにも隣に奈緒はもういなかった。
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