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僕の腕は、上気した腕にしっかりと絡め捕られていた。
かすかに尖った顎が肩に刺さり、熱い吐息が開襟シャツの胸元に吹きかけられる。
─マツモトさん、それはマズいよ。
ミジンコみたいな理性と、エッチな狼が、峠道に揺れるマイクロバスの中で対峙している。
どうみても、ミジンコに勝ち目はない。
左腕から、包み込むみたいな膨らみを挟んで、肋骨の凹凸が感じて取れる。
空想のジプシーを振り切って、僕は右手でマツモトさんを、とんとんと叩く。
頑張れ、ミジンコ。
「マツモトさん、あの…」
なんて言って起こしたら良いんだろう。
胸が当たってるだなんて、とても言えない。
もしもそんなこと言ったら、イヤラシイ妄想をしていることを見透かされてしまうじゃないか。
「ねえ、起きて。マツモトさん」
それが、精一杯だ。
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