不意打ちの

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「メスの匂いがする。あーあ、かなりショック。」 ”メスの匂い”って、蜜の匂い? 他の女の匂いは知らないけど、甘いバターのようなあの匂いがちょっと顔を近づけただけで匂うんだろうか。 「何よ、メスの匂いって。」 わざとすっ呆けてみる。 「男を興奮させる匂い。」 「汗臭い? やだ、シャワー浴びて来ようかな。」 洗濯物を持って、そのまま部屋を出ようとしたのは、何となくこのまま雄大といることに危険を感じたから。 あの雄大が。弟分のかわいい雄大が男に見えちゃったから。 「美弥姉。」 雄大が掴んだのは私の右足の足首。 「僕、彼女と別れたよ。」 「そうなんだ。ちょっと放してよ。」 「”そうなんだ”じゃなくて、”どうして?”って聞いてよ。」 あー、面倒臭い。 「”どうして?”」 思いっきり棒読みで聞いてやった。 「美弥姉と付き合うため。そんなフラフラしてる男なんて振って、僕にしなよ。」 「フラフラなんて人聞きの悪い。別に女癖が悪いんじゃなくて、ただの転勤族ってだけだよ。」 *** 実は亘のアパートに行くのは結構ドキドキだった。 他の女の痕跡があったら、どうしようと思って。 会社から直接ホテルに来た亘は、私に見られたらマズい物を隠す時間はなかったはずだ。 ホテルをチェックアウトした後、亘の家に行きたいと言い出したのは私。 もっと愛し合いたいと思ったからで他意はなかった。 なのに、亘が一瞬、考える素振りをしたので、『え? まさか?』なんて急にドキドキしてきた。 「ここんところ留守がちで掃除してないし、布団だってずっと干してないんだ。」 「じゃあ、お布団干して、掃除してあげる。」 無邪気な顔でニッコリと微笑んでやった。どうだ。断れまい。 「あー、いや。いいよ、掃除は。」 ……怪しい。 アパートに着くとカーテンを閉め切った亘の部屋は薄暗くて、よく見えないうえに靴を脱ぐ前に胸をまさぐられた。 ……超、怪しい。このままベッドに押し倒して私を溺れさせて、周りを見せない気だ。 「なんか空気が淀んでて息苦しいね。窓、ちょっと開けよう?」 亘を押しのけてカーテンを開けたら、目の前の光景に絶句した。 なんじゃ、こりゃあ?!
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