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ベッドの足元から廊下の手前まで、ごみ袋が並んでいる。ざっと見たところ20個ぐらい?
市の指定の45リットルのごみ袋。
異臭はしないけど、ここまで溜め込むってどういうこと?
「なんで捨てないの?」
当然至極な疑問だと思う。
よくテレビで見るゴミ屋敷との決定的な違いは、ごみ袋にちゃんと入っているということ。
もったいなくて捨てられないわけでも、分別できなくて捨てられないわけでもなさそうだ。
「前の日とか夜に捨てちゃいけないんだ。」
どこでもそうだと思うけど。
猫やカラスに荒らされたり、放火魔に火を着けられる恐れがあるからね。
「朝、会社に行く時に捨てて行こうと思うんだけど、いつもギリギリでなかなか捨てられない。
で、溜まりに溜まったら、ますます捨てるのが大変で、また溜まっていくという悪循環。
生ごみはトイレに流してるから臭くないし、カップ麺の容器なんかもきれいに洗ってから捨ててるから。」
なんて、ちょっと威張って言う。
いやいや、トイレに流しちゃダメでしょう?
「私、ここで一緒に暮らすの?」
ちょっと、いや、かなり嫌かも。
結局、部屋にもベッドにもバスルームにも女の気配を感じさせる物は何もなかった。
ごちゃごちゃ物が乗っているテーブルの上には、私の写真。
大学時代に一緒にプールに行った時のビキニ姿の私。
今より幼い感じで、今よりムチムチしていた。
毎日、私の写真を見ながらカップ麺を啜ってるのかな。
そう考えたら、凄く嬉しい。
「このベッド、大学の時からだから、底抜けそうなんだよ。新しいの買おうな。ダブルベッド。」
ギシギシ凄い音をさせながら、亘が私を後ろから突く。
ダブルベッドなんてこの部屋に入らないんじゃないの?と言いたいのに、私の口から漏れるのははしたない喘ぎ声だけだ。
よく女は演技であんな声を出してるなんて言うけど、私に限って言えばそんなことはない。
出さずにすむなら、こんな声は出したくない。
「あー、でも、こうやってずっと合体してるんだったらシングルでもいいか。」
「ん。シン…グルで…いい。」
「うん。頑丈な奴にしないとな。」
こんな風にセックスしながら、同棲生活について打ち合わせをしていった。
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