不意打ちの

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「む、無理矢理キスされた。」 「雄大、てめえ!!」 涼介がガバッと立ち上がるのと、雄大が玄関を出て行くのがほぼ同時だった。 「涼介! いいから。ほっといていい。」 追いかけて殴りそうな勢いの涼介をとりあえず引き留めた。 なんで、こんなことになっちゃったんだろう。 幼稚園の時からの大親友の2人なのに。 「他には? なんか、されなかった?」 雄大を追うのをやめた涼介は私の正面にしゃがみ込むと、そっと私を抱きしめた。 「大丈夫。キスだけ。……油断した。」 悔しかった。 男と2人きりで部屋にいた私が悪かったんだろうけど、相手は雄大だ。 私のことを好きだと言っても、弟分の雄大が私に無理矢理何かするなんて思いもしなかった。 飼い犬に手を噛まれた気分だ。 「え?! 美弥?」 キッチンの方から声を掛けられて、ビクッと身体が震えた。 あ、お母さん。いないと思ったら、お風呂に入ってたんだ。 「ただいま。ていうか、とっくに帰ってたんだけど、2人とも寝てたから。」 「あら、そう。雄大くんは?」 「帰った。あいつ、出入り禁止な。姉ちゃんに手ェ出そうとした。」 ムスッとした顔で言い放った涼介はさっさとお風呂に行ってしまった。 そんな涼介を面白そうな顔で見送った母は、娘の貞操の危機を軽く考えているとしか思えない。 「あんたと涼介、ホントに仲がいいわね。」 なんて言って、笑っている。 「笑い事じゃないよ。雄大に引き倒されて、無理やりキスされたんだから!」 と訴えても、若いっていいわね、なんて言う。 キスよ? キス! 亘以外の人となんて、したことなかったのに。 日本人なんだから、キスは挨拶じゃないんだよ。 性行為の入り口みたいなもんでしょう? 愛し合っている者同士しかしちゃいけない行為だよ。 無理やりなんて、レイプみたいなもんでしょ? とは思っていても、母親相手にはちょっと言えない。 もう! 涼介、カモン! 深刻に受け止めてくれた涼介にそばにいてほしかった。
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