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「ママ、外でていい?」
タリアは、うしろで朝食の仕度をしていたママに聞いた。
「仕方ないわね。少しだけよ?」
ママはにっこりと微笑んだ。
「うん!」
タリアはちっちゃなコート、手ぶくろ、長ぐつをそれぞれ着ると外へ出た。玄関前の雪を手ですくい、空へ向かって放り投げる。
タリアは雪が大好きだった。雪を手でこねてボールにすると、地面に置いてコロコロ転がしていった。どうやら、スノーマンを作るつもりらしい。とても楽しそうだった。
ふと、タリアの足が止まる。
「・・・・・。」
タリアは、家の前の道路で、スーパーのクリスマスイベントを知らせる看板を持った、サンタクロース姿の男を見ていた。その目は、何故か懐かしそうで、どこかはかなげであった。
「・・・・・。」
ママは家の中から、その様子を見て悲しそうにしていた。タリアのあの眼の理由を、知っていたからである。
実は、タリアのパパが生きていた頃、毎年クリスマスになるとパパがサンタクロースの格好をしてプレゼントをくれたのだ。タリアはそれがパパだということを知りながらも、とてもうれしかった。
だが、その姿ももう見ることはできない。
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