1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ママ今日、同窓会なんでしょ?」
タリアは学校の仕度をしながら言った。
「ええ。大学のサークルのね。」
ママは言う。
「私のことは忘れて、楽しんできてね。」
タリアは微笑み、言う。
「ありがとう、タリア。夕食には間に合うから。」
ママは言った。タリアはうなづく。
「うん。じゃあ、行ってきます!」
タリアは元気よく家を飛び出した。
「気を付けてね。」
手を振り、ママは見送った。
ママは大学時代、演劇サークルに入っていた。懐かしい面々と共にシャンペンを飲み、料理をつまみつつ思い出話にふけった。
しかし頭の中からは、あの時見たタリアの表情が消えない。
(・・・・・。)
ママは時折、深刻な表情を見せる。
「どうかしたの?」
それに気付いた仲間の一人が、声をかけた。
「う、ううん。何でもない・・・。」
ママはそう繕う。しかし、その表情が晴れることはない。
(・・・、そうだ!)
急に何かをひらめいたように、ママは顔を上げた。
「ちょっとみんな、聞いてほしいの。」
ママはみんなに呼び掛けた。視線が一気にママに集まる。ママの表情には明るさが戻っていた。
最初のコメントを投稿しよう!