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「ふつうじゃ考えられないよ?
よっぽどイヤなことあったんだ?
あ!ひょっとしてマザコン?潔癖症?
はやりのモラハラとか?」
「どれも違うけど。
…それ、言わなきゃダメかな?」
向かいの席から身を乗り出してくる栞の追及を、
無駄だと知りつつやんわりと断ってみる。
「当たり前でしょ?言わなきゃ、
私、瑞月のこと庇ってあげられないよ?
全女子社員あこがれの的を、
入社早々かっさらって行ったんだから、
相当恨み買ってると思って間違いないんだからね!」
せっかく小さくなっていた栞の声が、
興奮でまた大きくなっていく。
「だよね…」
がっくりとうなだれた頭の上から、
しょうがないなってため息が落ちてきた。
「今晩、家来る?」
「行く!」
即答で顔を上げると、デコピンが飛んでくる。
「ったく、調子いいんだから!」
「いったぁい」
自分でも単純だなと思うけど、栞の心遣いが素直に嬉しかった。
「ま、こんなとこでする話でもないし」
「ありがと、栞!」
「その代り、ここ、奢ってもらうからね!」
意地悪そうなその笑顔に、慌てて財布の中身を確認する。
ぎりぎりセーフ!
給料日前に急な出費は痛いんだけど、
そんなこと言っていられないくらい、
現状は逼迫していた。
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