第1話

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「簡単に言うと、…プロポーズされたから断ったの! で、断ったのに付き合ってるのも変でしょ? だから別れたってだけで、」 「いや!全っ然、わかんないんだけど?」 話を遮った栞の声が大きすぎて、 剥いていた玉ねぎを床に落としてしまった。 「えぇっ?と、…どのへんが?」 「どれもこれもよ!ってかいつの間にプロポーズされてんの?」 「んー、先週?いや、先々週かな?」 「覚えときなさいよ!記念日でしょー?」 「でも、もう別れたし」 淡々と受け答えする私とは裏腹に、 栞はかなりイライラしているように見えた。 「そうだ、理由!理由を言いなさいよ!なんで断ったの?」 「理由は、んー、そうだなぁ…」 考え込むように組んだ腕にお腹から、 ぐぅ~っと緊張感のかけらもない音が伝わる。 「み~づ~きぃ~!」 「ごめんなさいぃっ!!」 「もういいわ、続きは出来上がってからね!」 「やった!」 作ると言っても、完成までそんなに時間はかからなかった。 二人とも飲む気満々だったから、 おつまみはお惣菜コーナーで調達して、 メインのパスタも、野菜を切って炒めるくらいのカンタンなもの。 手際のいい栞にかかれば、完成まではあっというまだった。
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