たかこ②

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旧友が訪ねてきた、と聞いて、来客用の小部屋に来たら、そこにいたのは知らないおばあさんだった。 しかも、そのおばあさんが、私の顔を見て驚くのだ。 「あなたが式部だったの?」 私にとっても知らない人なのだけれど、おばあさんにとっても、『知らないけど知っている人』のようだ。ややこしい。 しかも、なんだかにやにやしていて…口調も妙に若くて、馴れ馴れしくて…。 高級品には見えない衣装だけれども、立ち居振舞いが、落ち着いている。客のわりに宮中に慣れている様にも見える。だからこそ、取り次ぎされてここに至ったのだろう。 …不気味だ。 「私の存じ上げない方とお見受けいたしますが、どちら様でしょう。それとも、手違いでしょうか?」 「いいの、お構い無く」 こっちが、構うに決まっているでしょうが。 知らない人に、顔見てにやにやされているんだから! 「覚えてないかー。だよねー。内裏(だいり)を去ってから大分経つから、私は、外見もかなり変わったと思うし」 そんな親しげに話しかけられたからといって、ハイそうですねと親しげに返せるはずがない。 「その顔、覚えてる。いい年して、来たばかりで慣れてなくて、それでも、楽しめばいいものを、辛気くさそうに出仕しててさ」 ぼんやり、記憶に触れるものがあった。 「この世は面白いことばかり、よ。ねぇ、人生観かわった?」 「あなた。もしかして…」 そうだ。昔、と呼べるくらい前。美しくない顔を晒すことが耐えがたくて。 それ以上に、男性の視線やら、主の寵やら、機知を見せびらかす機会やら…何かしらを獲ようと、表面穏やかに、目だけをぎらぎらと光らせている同僚たちにうんざりもしていた。 まだ、こちらでは新人であった頃。
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