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自分で言うのはどうかと思うけれど、『鳴り物入り』で宮中に上がってきたオバサンの新人だったのだ。
同僚との関係もうまく築けず、敬遠されるばかりの日々。そのくせ、ぎょっとするような身分の高い方とのやり取りに、突然巻き込まれることもある。
一挙手一投足を観察されている、息苦しい生活だった。
そんな私に、声をかけてきた、女。
しかも、通りすがりに。
こんな顔だったかもしれない。
当時はもっとしっかり化粧がされていたとは思うのだけれど。
「あ、大声出さないでね。困るのは貴女だから。私も散々こちらの陣営かと疑われて困ったけれど、貴女も今更こちらに通じていたなんて言われるの心外でしょう」
『こちらの陣営』と、言われて浮かぶ面々はいくつもある。
敵対する者。
すると、腰が座った。
「大きな声など出しません」
「なら、いいわ」
そういって、袂から扇子を取りだし広げた。
新しくはないが、衣装よりはぐんと品の良いもの。どっしりとした松は、金泥で描かれている。
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