たかこ②

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「私は、貴女の話が好きよ。早く続きが読みたいわ」 「それは。ありがとうございます」 何度も何人にも、人によれば顔を会わせるたびに言われる言葉なので、息をするかのように返事をしてしまった。 このおばあさんは、私のことを知っているのだと、改めて思う。 「やっぱり、源氏の君には、きらきら耀いて頂かないといけないと思うのよ! 明石なんかに、流浪するのはちょっと…。 まぁ、『うら寂しい場所に美形』という場面も、美味しくはあるんだけども。そこのところはアレよね、『伊勢物語』風味よね。 失意の貴人が、出会う運命の人…! いや、明石に源氏の君に釣り合う女人(にょにん)などいるはずないしねぇ。まだ近場の宇治とかなら分かるんだけど」 『光源氏の物語』についての、止まらない喋りの奔流に押されそうになる中、本来最初に切り出すべき用件を思い出した。 「すみませんが」 おばあさんは、口を扇子で隠して、ことばを止めた。 「いったい、どなたでいらっしゃるのでしょう。御用件は何ですか?」
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