たかこ③

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「『御出産日記』に、清少納言に関する記述があった、と?」 「そう。あった」 雲が月を隠して、また月が顔を出す間、沈黙していた私の急な質問に、清少納言はゆったりと頷く。 「けれど、『御出産日記』ではないわ。『紫式部の日記』よ」 『紫式部の日記』ーー? まがい物が? 誰かの手によって? 否。 否。 混入? そう。故意の混入。 女房の部屋に入れるのは?、 部屋から執筆したものを手にする事ができるのは? 決まっている。 雇い主。 藤原の道長、その人しかいない。 「あぁ…」 ため息のような、納得の声のような。 自分の口からこぼれた一息で。 「あぁ」 清少納言は、納得の声をあげる。 「道長さまね、驚かないでよ。貴女分かりやすいって言ってるでしょ」 それに。 「私だって、道長さまのこと知っているのよ。敵対しているのに、贔屓したって、同僚たちから白い目で見られるくらいにはね」
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