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息一つで看破された。
これだから、読み込みの良い人間は…。
「読み込み?…あぁ、ごめんなさい。聞いたらいけないこと聞いてしまったみたいね?」
「…いえ…。口に出したつもりがなかったものですから」
「じゃあ、教えてよ」
清少納言の笑顔を見て、これは引かないぞ、と、分かる。
分野が違うけれども、筆を執ることでこの宮中を渡った身だ。好奇心を満たすことが、多いに作品に役立っていることだろう。
書きたいから、知りたくて
知ってしまったら、書かずにはいられない
そして
また新たに書くために、知りたくなる
ーーそういう業(ごう)を、背負っている。
「今、貴女の中で、今から私が説明することを理解しましたよね。そういう力です」
「……別の言い方、して?」
「流れを察するとでもいいましょうか。口に出さない事も理解して、なぜ口に出さないのかも、推察可能というような」
「心を見透かすかのような?」
「心、だけではないのですが」
言葉を探して口を閉じたところで、
「あー」
何だか、勝手に理解したようだ。
「道長さまのような、ね」
ぎくり。
一瞬、強張った肩で、また気づかれる。
私が、雇い主を苦手だと思っていることを。
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