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ああ、何で私がこんなことをしなきゃならないの?
何度も込み上げてきた言葉を、またぐっと飲み干す。
「彼女は挨拶一つをとっても洗練されていたよ。同じく、才女の君なら、できるだろう?」
これに、かっこで隠れた『それ以上のものを』って言葉がある。
「簡単だろう?」
これは、『小難しい顔をせず、さらりとやって見せろ』ってことらしい。
おっしゃっているのは、上司…ならまだ良かったものの、残念ながら雇い主である。拒否をしたら首がとぶかもしれない。
もともとの雇用条件を思い出して欲しい。
さも、自由であるかのように言ったではないか。
《君の作品に惚れたよ! 援助は惜しまないから、ウチでしっかり書いてくれないか!》
舞い上がらなかったと言えば嘘になる。
ちょっと浮かれた自分が嫌で、拒否して拒否して拒否したのに、ねばり負けた。
それから、勝てた事がない。
というか、あの天真爛漫で計算高い(相反するけど、当てはまると思う)人に、勝てるヒトなんて、この世にはいない。
あぁ、でも、条件違反に抵触するって程度かも。
全く違う分野を依頼されたわけではないのだから。
うん。自分ですらそう思うのだから、あの雇い主に通る言い分ではない。
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