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私が任されたのは、記録である。
とっても正式なもので、出来上がると美々しく飾られて本箱にしまわれたり、みんなに配られたりするのが、筆を執る前から分かっている。
出来の良し悪しに関わらず、受け取る人は「ありがたやー」とばかりに褒めそやすだろう。
だって、あの主の愛娘の出産の記録なんだもの。
私だって、娘を育てる身ですから。
人生において出産が一大事件であるし、後で思い返せるように記録を残したくなるのも理解できる。
でもっ、じゃあっ、なんでっ、『また』!
何度も何度も何度も、比べられなきゃいけないのよ、もうこの場を去った人と!
思い出は美しいのよ!
目の前にいない人は、美化されていく、一方よ!
死んだ人だってそうよ!
…死んだ主人だって、いつも、笑っていたような気がするのだから。
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