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某テレビ局の、関係者用休憩スペースで待ち合わせ中の貴子は、壁際に設置してある自販機でミルクティーを購入し、一見のんびりとそれを口に運びながら、メモ帳に思い付いたレシピを書きなぐっていた。
「そろそろ時間かしら?」
そう呟きながら腕時計に視線を落とすと同時に、斜め後ろに誰かの気配を感じた貴子は、(相変わらず時間にマメな人だわ)と笑い出したくなるのを堪えつつ顔を上げる。すると想像通り待ち人が自分の横を通って前の席に腰を下ろし、笑顔で挨拶してきた。
「やあ、宇田川さん。遅れて申し訳無い」
「いえ、時間ぴったりですよ? 加納編成局長」
「それは良かった。部屋を出がけに面倒な奴に捕まってね。危うく遅れる所だったよ」
「まあ! その人は、勇者ですね。鬼の編成局長を足止めするなんて」
「酷いな。私に同情してくれないのかい?」
ひとしきりくすくすと笑い合った二人だったが、どちらからともなく笑いを消し、真顔で向き合った。
「無駄話はこれ位にして、本題に入って良いかな?」
「勿論です。多忙な局長のお時間を、浪費させる訳にはいきません」
「それでは……、まずこれを見て欲しい」
そこで加納が、小脇に抱えて持って来たファイルの束から、大判の封筒を取り出した。
差し出されたそれを無言で受け取った貴子は、中身を取り出してざっと目を走らせ、無言のまま眉根を寄せる。しかし十分予想できていた内容の代物であり、何事も無かった風情で元通り封筒にしまい込んだ。
対する加納もその間無言で貴子の様子を窺っていたが、彼女が封筒をテーブルに置いたのを見て、忌々しげに口を開く。
「全く……、大の大人がこんな事をして恥ずかしいと思わないのかと言う以前に、自分がどれだけ馬鹿な事をしているのか、本当に分かっていないらしい事に呆れる」
もはや吐き捨てると言った感じの物言いに、貴子は苦笑して母方の叔父を宥めた。
「あの連中の性根は、多少年を取った位で改善する様な代物ではありませんし、おじさまが腹を立てる必要はありません」
「しかしだな、貴子ちゃん。こんな誹謗中傷を平気で垂れ流す様な連中を野放しにしているなんて、私には到底我慢できないんだ」
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