第9章 貴子の暗躍

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 そこからは現状の報告等に移った為、隆也はテレビの視聴を止めて再び電話をかけ始めた。 「西脇、大体の事情は分かった。今、新野署か?」  挨拶抜きで問いかけると、西脇が神妙に答える。 「はい。約束をした刑事以外にも、捜査担当者が全て出払っていまして。理由を聞いて引き上げようとしたら、ロビーのテレビでニュース映像が出ていて肝を潰しました」  捜査の一環で柳井クッキングスクールに入ったものの、捜査終了後も真面目に通って貴子に教えを乞うている彼にしてみれば、相当動揺して知らせてきたのだろうと推察した隆也は、なるべく穏やかな口調を心掛けて言い聞かせた。 「ご苦労だった。確かに心配だが、この手の犯罪は成功例が極めて少ない。早期に人質も解放されるだろうから、気に病まないでこのまま直帰しろ」 「分かりました。失礼します」 「ああ、ご苦労だった」  何とか自分を取り戻したらしい西脇が、いつもの口調で挨拶してきた事に安堵しながら、隆也はスマホをポケットに戻した。そして、先程まで話題になっていた貴子の事を考える。 (ああ見えて、れっきとした理由が無いと、自分から進んで揉め事に首を突っ込むタイプでは無いと思っていたが。本当に何をやっているんだ? まさか他に何か、あるんじゃ無いだろうな?)  何となく貴子の行動に違和感を感じたものの、それ以上は想像すらできなかった隆也は、早々に考える事を諦めた。そして何気なく、そろそろ区切り良く精査が終わりそうな書類を見下ろす。 (まだ仕事が終わらないしな。もう暫く、残業していくか)  そして机の引き出しから新しいファイルを引き出した隆也は、徹夜覚悟で自分の仕事を続行させつつ、警視庁内の関係部署とのネットワークを繋ぎながら、立て籠もり事件の情報収集を開始した。
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