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この間支店長の指示で帰宅指示が出た行員が列に並び始め、連絡先を記入していたが、ここで強引に譲原がクリップボードを取り上げた為、周囲から抗議の声が沸き起こった。しかし譲原はそんな事には構わず、報告してきた部下に噛み付く。
「何人だ?」
「搬送された人質は、何人だと聞いてるんだ!」
「はい! 重傷者二名、軽傷者十三名です!」
「今ここには何人並んでる? そして支店長から電話で飲食物の要求が有ったのは、何人分だった?」
「ええと、先程手配したのは人質が七十九名分、犯人六名分です」
「それで今、列に並んでいるのは……、ちょっと待って下さい。……三十七人ですね」
周囲の幾人かの警官が、真顔に真顔で答えたが、それを聞いた譲原は、手元記入された内容を見下ろして、蒼白になった。
「名簿は……、既に三十三人分書かれてる。やられた、六人多い」
「課長!?」
譲原の呟きを耳にした周囲の捜査員が、正確に現状を理解して顔色を無くす中、有吉の怒声が響き渡った。
「大至急、緊急配備! それと何とか理由を付けて、マスコミから映像を提出させろ! 出てきた人間を撮影してる筈だ!」
「はい!」
そして捜査陣は事態の深刻さに動揺しつつも、その失態をあっさりと外部に漏らす訳にもいかず、現場は益々混乱を極める事になった。
「もしもし? 西脇どうした?」
「課長、先生から連絡はありましたか?」
自主的に残業続行中だった隆也が、西脇から再度電話を受けて開口一番言われた内容で、素早くその用件を察知して確認を入れる。
「特には無いが。人質が解放されたか?」
「はい」
「まさか現場に出向いているのか?」
「気になりまして」
「ご苦労だったな」
思わず苦笑して部下を労った隆也だったが、何故か西脇は声を低めて報告した。
「それが……、新野署の連中が妙な感じです。一旦落ち着いたと思ったら、急にバタバタし始めまして」
「どういう事だ?」
怪訝な顔になって確認を入れた隆也に、西脇が更に声を潜めて推測を述べる。
「一向にビルから犯人が連行されて来ませんし、怪我をして搬送された様子もありません。マスコミも騒ぎ出していますし……。犯人が逃走したのではないでしょうか?」
「まさか! あれだけ包囲していたのにどうやって?」
信じられない思いで問いを発した隆也だったが、ここで西脇が困惑した声で、ある事を口にした。
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