第11章 復讐の第二幕

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「そうそう、ここは諦めが肝心。事件当事者の話なんて、滅多に聞く機会無いんだから」  そう言われた貴子は、諦めた様に小さく肩を竦めた。 「はぁい。じゃあ全体的な経過はこれまでに大体言いましたけど、他にどんな事が聞きたいですか?」 「ズバリ、犯人像とか? これまでも警察当局の行動に、色々鋭い突っ込みや批評を加えつつ状況説明をしてくれた宇田川さんの事だから、案外見当ついてるんじゃない?」  番組を面白くしようと司会者が茶化す様に言ってきたが、その台詞に貴子は真顔で考え込んだ。 「う~ん、そう言われても……、本当に目出し帽と野球帽で、目元も良く見えなかった位だし。男五人に、女一人って事位しか見当がついてないけど……」 「え? 何で女が混じってたって分かるの?」  予想外の事を言われて司会者が戸惑った声を上げると、貴子は慌てて弁解してきた。 「あ、今のは一応、私が個人的にそう感じただけですよ?」 「因みに、その理由は?」 「犯人の中で一番小柄な人だけ、一言も喋らなかったんです。だから、声で性別が分かるから警戒してるのかな、と。それにトイレに付いて来られた時、女性用トイレに私に続いて微塵も躊躇いなく入って来たんです。男性だったら、やっぱり一瞬戸惑いません?」 「成程……。確かにそうかもな」  男性の共演者が感心したように相槌を打ったが、ここで貴子は真顔で付け加えた。 「でも男性でも女装癖があるとか盗撮常習犯で、女子トイレに入り慣れてるって可能性もあるんですけどね?」  貴子がそう真顔で口にした途端、スタジオは一瞬静まり返り、次いで爆笑に包まれた。そして自らも笑いを堪えながら、司会者が貴子に声をかける。 「ちょっと待って貴ちゃん、勘弁して。俺今、凄く感心した所だったのに、笑いを取らないで」 「ごめんなさい」  笑顔で一応謝罪してから貴子は真剣な顔に戻って、考え深げに話を続けた。 「だけどその犯人、リーダーの犯人と頻繁に小声で話し合ってたし、リーダーの恋人とかって考えると、しっくりくるんですよね」  そんな風に思わせぶりに述べると、特に女性陣が色めき立つ。 「じゃあカップルで銀行強盗って事ですか!?」 「何か一気に、ロマンスの感じがするんですけど!」 「現代版、ボニー&クライドって事!?」  目の色を変えて食いついて来た女性達に、貴子は苦笑して軽く首を傾げた。
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