第11章 復讐の第二幕

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「さあ、どうでしょう……。それにリーダーの男は普通に喋ってましたけど、他の犯人は喋る時は皆片言だし、何となくアクセントに違和感を感じたんです」 「それじゃあ純粋な日本人じゃないとか、出稼ぎの外国人労働者とか?」 「彼女の借金を返す為に、強盗に走ったかも?」 「銃も人数分揃ってた事を考えると、東南アジア系の犯罪組織が最近国内で勢力を伸ばしてるって噂も、無視できないですよね」 「やっぱり、裏には組織が付いてるのかな?」 「そりゃあ、こんな大胆な事やってのけるんだし、バックが無いと駄目だろ?」 「そうだなあ、最近物騒だよね」 「本当に、普通に街を歩いているだけで、犯罪に巻き込まれる時代だもの。気を付けないと」 「それじゃあさ、貴子ちゃん。支店の中では両手を縛られてたって言ってたけど……」  貴子が要所要所で、出演者達が想像を膨らませる様な情報を提供したりコメントを繰り返している為、議論はどんどん白熱していった。しかしそれ以上見る気になれなかった隆也は、苦々しい顔つきになって視聴を終わらせた。 「完全に見境なしだな。やって良い事とそうでない事の、見極めが付かなくなってるとは。普段はそこまで、馬鹿じゃない筈だが……」  絶望的な表情になってそう呟いた隆也は、それ以上時間を無駄にはせず、芳文に電話をかけた。 「見たか?」  繋がるなり短く問いかけた相手に、隆也は苦々しく応じる。 「ああ、拙過ぎる。明らかにやり過ぎだし、察するに俺が見始める前に警察の対応とか批判してたのか?」 「あからさまには非難していなかったが、チクチクと皮肉っぽい事を。それにあの言動、情報操作と取られても文句言えんだろ。どう考えても捜査を混乱させる為に、言っているとしか思えない。さっきから犯人逮捕の一報も無いしな。それで、どうする気だ?」   暗に「取り逃がしたよな?」と含ませたその問いかけに、隆也は珍しく迷う素振りを見せてから、言葉少なに依頼した。 「……悪いが、回収を頼む」 「お前の立場からすると、そうだろうな。だが、困ったな。そろそろ貴子が番組に出演してるのが分かって、捜査員が大挙してテレビ局に押し掛けてくるんじゃないのか?」  苦笑しながら応じた芳文だったが、考えられる懸念を口にすると、隆也はすぐに記憶の中から使えそうな情報を引き出して告げた。
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