第11章 復讐の第二幕

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「確か……、あそこの編成局長が、あいつの母方の叔父だ。面識は無いが、あいつの母方は警察上層部が揃ってるから、俺の身元辺りは調べが付いてて名前位は知ってるだろう。事情を話して協力を仰ぐ」 「それなら俺は今から関東テレビに向かう。段取りを付けたら、連絡を入れてくれ」 「分かった。切るぞ」  長い付き合いであり、余計な説明は抜きで動いてくれる芳文に感謝しつつ、隆也は自身のスマホの中に入れておいたデータを呼び出した。 「一応、調べておいて助かったな」  まさかこんな事態で使う事になるとはと、隆也は心底うんざりしながら、これまで全く面識の無い人物に電話をかける事となった。  貴子が知らない所で色々事態が動いている間に無事番組の収録が終了し、出演者は互いに挨拶をしながら、スタジオの奥に引っ込んだ。貴子はすぐに帰るつもりでいたが、やはり共演者に捕まってしまう。 「お疲れ様でした」 「お疲れ~。ねえ、貴ちゃん。これからちょっと付き合わない?」 「そうですよ! 事件の話、もう少し聞きたいです!」 「結構色々、喋ったと思うんですけど」  複数人に囲まれてしまい、苦笑いで(どうしようかしら?)と考え込んだ貴子だったが、ここで予想外の救いの神が現れた。 「宇田川さん! ちょっと来てくれるかな?」 「はい」  番組担当ディレクターの立浪が、隅の方から手招きしてきた為、貴子はこれ幸いと逃げ出す事にする。 「何か呼ばれているみたいだから、失礼しますね」 「うう、残念!」 「宇田川さん、今度レギュラー降板しちゃうんですよね? その関連の話ですか」 「さあ……。でも次回の収録までは出るから、皆が飽きていなかったら、空き時間にじっくり話をするわ」 「約束ですよ?」 「じゃあ仕方ないですね」 「お疲れ様でした」  そして周りを振り切った貴子は、出入り口近くに佇む人物に駆け寄った。 「立浪さん、お待たせしました。どうかしましたか?」 「実は加納編成局長から、ちょっと案内を頼まれてね。付いて来てくれるかな?」 「はあ……」  そう説明して廊下を歩き出した立浪の後ろに付きながら、貴子は密かに首を捻った。 (加納のおじさまが? 普段はお互いに無関係を装ってるのに、どうしたのかしら?)  不思議に思いつつおとなしく付いて行くと、幾つかドアを抜けた所で、予想もしていなかった人物が貴子を待ち受けていた。 「やあ、貴子」
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