おとぎの国の凉葉ちゃん☆

2/10
前へ
/10ページ
次へ
その日はとてもお天気の良い日でした。 凉葉姫はお供も連れずに、お城を出て、街を抜けて、森へ向かいました。 赤いずきんを被り、葡萄酒とケーキの入った籠をぶら下げて。 そう、今日はおばあさまの家へ行くのです。 凉葉姫は森が大好きでした。 だって、小鳥が鳴いて、色とりどりのお花が咲いて、窮屈なお城とは違い、なんて森は素敵な所なんでしょう。 『いいか、凉葉や。途中で道草をしてはならんぞ? それから悪い狼には用心するのだ。話しかけられても答えてはいかんぞ? 』 楽しい気持ちでスキップしながら道をゆく凉葉姫は、お城を出る時に王様である父親から言われたことなんか、もうすっかり忘れてしまっていました。 だから、突然声を掛けられて、相手が誰かを確かめずに返事をしてしまったのです。 「こんにちは。赤いずきんがとても可愛い凉葉姫 」 「こんにちは。あら、あなたは? 」 すぅっと伸びた高い背。サラサラとした銀色の髪と、ハッと目を引く整った顔立ち。しかし、頭の横にぴょこんと見えるのは……。 「あなた、まさか狼さん? 」 「えっ?! なんで分かっ……ッ? 」 「だって、お耳が…… 」 「げ!! 嘘だっ! 」 どうやら目深に被ったパーカーのフードで隠れていると思っていたらしいのです。 今更遅いのに、慌てて耳を隠す狼に、凉葉姫はクスッと笑いました。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加