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しかし、家の中からはなんの返事もありません。
そこで、凉葉姫はベッドルームへ行って、コンコンと扉を叩きました。
すると「……おはいり」と中からしゃがれた声が聞こえます。
凉葉姫が、ギ~……と扉を開けて中に入ると、おばあさんが奥のベッドに横になっていました。
暗い部屋の中、ずきんを顔まですっぽりと被っています。
凉葉姫はベッドに近付きながら、おばあさんに話し掛けました。
「ああら、おばあさま。おばあさまのお耳は大きいのねぇ 」
「お前の言うことが良く聞こえるようにさ 」
「ああら、おばあさま。おばあさまのお目めは大きいのねぇ 」
「お前が良く見えるようにさ 」
「ああら、おばあさま。おばあさまのお手ては大きいのねぇ 」
「お前が良く掴めるようにさ 」
「ああら、おばあさま。 おばあさまのお口は…… 」
「お前が良く食べられるようにさっ! 」
こう言い終わるか終わらないうちに、おばあさんに変装した狼は、いきなりベッドから飛び出して、可哀相な凉葉姫をベッドに引っ張り込みました。
「はっは……、何が起きたか分からないって顔だな。 俺はずっと、お前んことを狙ってたんだよ! 」
狼はずきんを脱ぎ捨てると、舌舐めずりして凉葉姫を見下ろし言いました。
突然のことにビックリした凉葉姫は、狼の下で瞳をぱちくりさせます。
「驚いたか! 」
しかし、組み敷かれた凉葉姫は得意げな狼を見詰めながら、すっ……と瞳を細めると片方の口唇の端を持ち上げました。
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