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「……知ってるわ 」
「え……? 」
言うなりふふっと笑って、狼の腕を引っ張ります。
「わわっ!! 」
体勢を崩した狼がベッドに倒れるのを見た凉葉姫は、すかさず狼の上に跨りました。
「駄目よ、お痛しちゃ…… 」
「お、まえ……?」
形勢が反対になって、何が起こっているのか分からないらしい狼の金色の瞳が、動揺して揺れています。
「それに人の話は最後まで聞くものよ? 」
そう言って狼の頬を両手で包むと、桜色の口唇を狼のそれに落としました。
ビクッ……と狼の身体が震えて、やっぱり可愛い……と凉葉姫は思います。
「私は、おばあさまのお口はキスしたくなる程、色っぽいのねって言おうとしたのに 」
「……っ?! 」
「お花だってあなたの為に沢山摘んできたのに、いきなり腕を引っ張るからバラバラになっちゃったじゃない 」
ベッドの下に散らばった色とりどりの花々を見て、涼葉姫はふむ……と小さく息を吐きました。
「でもまぁ、これはこれで綺麗ね。初めての夜にぴったりだわ 」
「何言って……。お前、本当に涼葉姫か? 」
信じられない……というように首を振った狼に、凉葉姫はにっこりと笑って言います。
「そうよ、おばあさま 」
「お、おばあさまじゃねぇ……っ! それに、俺が来たときにはお前のばあさん、留守だったぞ! 」
狼の言葉に、凉葉姫が瞳を見開きました。
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