おとぎの国の凉葉ちゃん☆

9/10
前へ
/10ページ
次へ
「え……?」 「俺、聞いたぞ。お前、隣の国の王子と結婚が決まってんだろ? 」 想像もしなかったことを言われて、涼葉姫は愕然としました。 「知ってる、の? 」 「……だから、言ってなんかやらねぇよ 」 だけど、狼があまりにも切なそうな顔をするから、こちらまで胸が痛くなってしまいました。 そんなことを言われて、本当なら怒らなくてはいけないのに。 凉葉姫は椅子から立ち上がって狼に近付くと、座っている狼の後ろからふんわりと抱き締めました。 「……幸せになりましょうって言ったのに、全然信じてないのね 」 「は? 」 「じゃあ代わりに、ずっと一緒に居てって言ってよ 」 「……っ?! そんな出来もしないこと…… 」 「出来るか出来ないかなんて、やってみなくちゃ分からないでしょう? 私のことを騙しても手に入れたいと思ってたのなら、諦めないで言ってみて? 」 黙ってしまった狼に、凉葉姫は想いが伝わるようにと囁きます。 「誰よりも好きだって言ってよ、狼さんのものになれって言ってよ。そうしたら、きっと狼さんの願いも私の願いも叶うわ 」 頑張って、勇気を出して。 抱き締める腕に力を込めると、躊躇うように狼が震える手を重ねてきました。 「言っても、いいのか? 」 凉葉姫は「……聞きたい」と、狼の耳にキスします。 ぴくんと動いた耳が愛しくて、凉葉姫は噛み付きたくなるのを我慢しました。 「……一緒に、いてくれよ 」 「うん、一緒にいる」 「お前が好きだよ 」 「うん、私も狼さんが好き 」 「俺のもんになれよ 」 「うん、私はあなたのものだよ 」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加