53人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……?」
「俺、聞いたぞ。お前、隣の国の王子と結婚が決まってんだろ? 」
想像もしなかったことを言われて、涼葉姫は愕然としました。
「知ってる、の? 」
「……だから、言ってなんかやらねぇよ 」
だけど、狼があまりにも切なそうな顔をするから、こちらまで胸が痛くなってしまいました。
そんなことを言われて、本当なら怒らなくてはいけないのに。
凉葉姫は椅子から立ち上がって狼に近付くと、座っている狼の後ろからふんわりと抱き締めました。
「……幸せになりましょうって言ったのに、全然信じてないのね 」
「は? 」
「じゃあ代わりに、ずっと一緒に居てって言ってよ 」
「……っ?! そんな出来もしないこと…… 」
「出来るか出来ないかなんて、やってみなくちゃ分からないでしょう? 私のことを騙しても手に入れたいと思ってたのなら、諦めないで言ってみて? 」
黙ってしまった狼に、凉葉姫は想いが伝わるようにと囁きます。
「誰よりも好きだって言ってよ、狼さんのものになれって言ってよ。そうしたら、きっと狼さんの願いも私の願いも叶うわ 」
頑張って、勇気を出して。
抱き締める腕に力を込めると、躊躇うように狼が震える手を重ねてきました。
「言っても、いいのか? 」
凉葉姫は「……聞きたい」と、狼の耳にキスします。
ぴくんと動いた耳が愛しくて、凉葉姫は噛み付きたくなるのを我慢しました。
「……一緒に、いてくれよ 」
「うん、一緒にいる」
「お前が好きだよ 」
「うん、私も狼さんが好き 」
「俺のもんになれよ 」
「うん、私はあなたのものだよ 」
最初のコメントを投稿しよう!