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彼らは“神”に与えられた役割と労働をキチンとこなしてきた。多少動きが遅くなろうと。それでも、“神”は全体的な動きの遅さに苛立ちを募らせていた。“神”の期待に応えようと努力をするも、“神”は初めの頃が忘れられない。全体の調子が昔に、戻らない限りは納得はしない。
「つい、この間もミクちゃんが消されたばかりだというのに」
誰かが呟きを漏らした。
歌が得意だったミクちゃんは、神がここに招き入れた存在であったが、彼女もまた動きの遅さを理由に消された。
「古参の花子だって」
誰もが不安に感じている。
“神”は新しくても、古くしても不要と判断すると消してしまうのだ。いや、もっと厳密にいえば、消す前に一度、改めて必要が不必要かを判断する為、ゴミ捨て場に捨てる。ゴミ捨て場に捨てられたモノ達を吟味した上で、消すか残すかを判断する。
彼らは今度は、自分ではないかとガクガクと震えていた。自分の方には来るな、来るなと念じても通じるはずもなく、やがて白羽の矢は一人に狙いを定めた。
「長老!」
白羽の矢が捕らえたのは、ずっしりと身を据えた、この世界が始まった頃、恐らく一番最初に招かれたであろう長老であった。確かに、長老はいつ連れていかれても不思議ではなかった。今でこそ、長老は動きが鈍く、何をするにも時間が掛かっていた。それでも昔は、素晴らしい動きで“神”に尽くしてきた。恐らく、“神”もそんな忠義を感じていたのだろうか。もしくは、一緒にこれまでやってきたので躊躇していたのか。長老には手を出さずにいた。
しかし、今日、よいよ、“神”は白羽の矢を持って、長老を捕らえる。誰もが長老の身代わりをと思うも、“神”の意志には逆らえずいた。
そんな中、若者の何人が長老を助けようと動こうとした。それを、察してか長老は言った。
「やめておけ・・・。“神”に消されるだけだ」
長老は助けるられることを拒む。
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