プロローグ 運命の出会い

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 学校帰りに買い物を済ませた、高校一年の美幸(よしゆき)は、最寄り駅に隣接した商業施設とオフィススペースが併設されている複合ビルから、駅への連絡通路に出る為に、下りエスカレーターに乗った。そして上機嫌で周囲を見渡す。 (ふふっ、可愛いのが買えたわ。早速明日、学校で皆に見せようっと。え?)  上機嫌に考え事をしていた美幸だったが、ふと左右に並んで設置されている隣の上りエスカレーターに視線を向けた時、その顔が強張った。  美幸とは逆に、今から上層階のテナントに買い物に行くつもりらしい、自分と同じセーラー服を着た、女生徒が上がって来る所だったのだが、彼女の後ろに帽子を深くかぶってちょっと見には年齢不肖の男が立っていた。それだけなら何も問題は無いが、持っているスポーツバッグのファスナーが中途半端に開き、更に開口部を前に立つ女生徒のスカートの下に入る様な位置で手に提げているのを見て、流石に美幸にはピンときた。  ちょうどその時、美幸とその二人が上下にすれ違ったが、美幸は鞄を隣のエスカレーターに投げ込み、次に躊躇う事無く反動を付けて飛び上がり、境目の手すりを越えて上りエスカレーターに降り立った。そしてエスカレーターにまばらに乗っていて唖然としている他の客を尻目に、不審な行動をしていた男に駆け寄り、その肩を掴んで非難の声を上げる。 「ちょっと!! あなた盗撮なんて男として、それ以前に人間として恥ずかしく無いの!?」 「え? きゃあっ!!」 「な、何を言いがかりつけんだ! ただ荷物を持っていただけだろうが!?」  美幸の声に驚いて振り返った女生徒は、真っ青になってスカートを押さえ、男は狼狽しつつもスポーツバッグを両手で抱えて弁解した。しかし美幸は強気に迫る。 「はぁ? しらばっくれる気? じゃあそのバッグの中身、見せて貰いましょうか? その後一緒に、警察に行って貰うわよ?」 「……っ、ふざけるな! 中身を確認するふりをして、カメラでも仕込んで俺を犯人に仕立て上げるつもりなんだな! 分かってんだぞ? お前ら同じ制服だからグルだろっ!!」 「えぇっ!?」 「なっ!」
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