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「じゃあ、俺の話はこれで終了。だから明日以降も、今まで通り接してくれて構わないから。食べるのを中断させて悪かった。どんどん食べてくれ」
「そうさせて貰います」
そうして上機嫌に色々話しかけてくる城崎に殆ど無意識に言葉を返しつつ、美幸はパフェを完食し、レモンティーも飲み干した。その頃には既に城崎は食べ終えており、二人揃って立ち上がる。
「じゃあ、また明日」
「はい……、どうも御馳走様でした……」
そして支払いを終えた城崎が美幸を促して外へ出てから、あっさりと別れの言葉を口にして立ち去って行った。
(えっと……、私、所謂告白をされたとか? いやいや、そうじゃないでしょ。普通世間一般の告白って場合、『好きです、付き合って下さい』って言われて『宜しくお願いします』か『お断りします』とかのやり取りが有る筈で、今回は何か一方的に言われただけだし。『時期が来たら改めて口説く』って。意味分からないし、何、この言い逃げ状態!?)
茫然自失状態のまま城崎の背中を見送った美幸に、店から慌てて出てきた隆が顔色を変えてながら声をかけた。
「おい、藤宮! お前城崎さんと、何話してたんだよ!? まさか付き合ってくれとか何とか、交際を申し込まれてたとかじゃ無いよな!?」
どう考えても自分を尾行していただろうと分かるタイミングでの隆の登場だったが、美幸はそんな事には気にも留めないまま、殆ど無意識に言い返した。
「交際の申し込み? 申し込まれてはいないわよ……、うん、そう言う事はね」
「じゃあ、一体何を話してたんだよ? 何だか随分驚いてたみたいだったし」
「昔の、ちょっとした話……。だけど、私……、人の顔を覚える事に関しては、結構自信があったのに……」
道路の向こうを見据えながら淡々とそんな事を口にした美幸に、隆は怪訝に思いながらも同意する。
「あ、ああ、そうだよな。お前、百人から居る同期全員、初顔合わせの翌日には覚えていたみたいだし」
「何で綺麗さっぱり、視界と記憶から排除……、なんかもの凄いショック……。しかも何で一人だけすっきりした顔で、爽やかに帰っちゃうかな?」
ブツブツと美幸が小声で呟いている内容が良く分からないまでも、どうやら城崎とは単に奢って貰っただけらしいと判断した隆は密かに安堵しつつ、この機会を逃してたまるかと早速誘いの言葉を口にした。
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