プロローグ 運命の出会い

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 エスカレーターを上りきった所で押し問答になった為、忽ち周りに人垣ができ、その中で美幸と被害者が同じ制服だったのを見て男が破れかぶれで叫んだが、偶々その日電車内での痴漢冤罪事件の報道が出ていた為に、周囲からの美幸達への視線が疑惑に満ちた物に変化した。それを察して美幸達は屈辱のあまり顔色を変えたが、男は調子に乗って、広範囲に聞こえる様に更に大声を張り上げる。 「最近の女子高生ってのは、本当に怖ぇえなぁ~。通報されたく無かったら金払えってか? ミエミエなんだよ!」 「……そんなっ」 「何ですってぇぇ!?」 「皆さ~ん! ここの女子高生達は、盗撮犯をでっち上げる性悪女です! この制服を見たらご用心下さ~い!!」 「私っ、そんな事っ!」 「でっち上げてるのはそっちでしょう! ……って、ちょっと待ちなさいっ!!」  周囲がザワザワとし始めた事で、スカーフの色で上級生と知れた彼女が涙目になり、美幸も些か焦って注意力が削がれた瞬間、男がその隙を突いて巧みに人垣をすり抜けて逃走した。それに一瞬遅れて美幸が気が付き、慌てて後を追う。 「ふざけないで! 待ちなさいよっ!」  叫んでも当然足を止める訳は無く、男は下りエスカレーターを駆け降り、自動ドアを抜けて連絡通路へ走り出た。  美幸も足が遅い方では無いが、流石に出遅れた分が取り戻せず、十数メートルの距離に歯噛みする。 (ちっ! 出遅れたわっ! 駅構内に紛れ込まれたら、見失っちゃう!!) 「誰かぁっ! その盗撮犯、捕まえてぇぇっ!!」  精一杯の声量で走りながら叫んだが、通路に居合わせた人間は怪訝な、または迷惑そうな顔をして、関わり合いになりたくないのか知らんぷりをして通り過ぎていく。 (悔しいっ!! 屑野郎をみすみす取り逃がすなんてっ!)  怒りに震えた美幸だったが、そこで予想外の事態が発生した。 「ぐわっ!!」 「え?」  いきなり横から金属製の、一部透明なゴミ箱が一直線に飛来し、男の頭に直撃した。当然、その衝撃をまともに受けた男がもんどり打って通路に倒れ込み、美幸は反射的にそれが飛んできた方向に目を向ける。
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