プロローグ 運命の出会い

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 悔しさと歓喜が入り混じったその口調に、美幸が怪訝に思いながら上級生に顔を向ける。 「あの、先輩。《桜花の君》って、何ですか?」  すると彼女は如何にも得意げに、自分達が在籍している学校の、創立以来のとある伝統を滔々と語り始めた。 「ああ、あなたは一年生だから、まだ耳にした事が無いのね? じゃあ教えてあげるけど、あの女性の写真は他の四人の方と一緒に、生徒会室に飾られているの。うちの高等部では、毎年文化祭の時に……」  そうして転がっている盗撮男と、それを捕まえに来た駅員を半ば無視しつつ、自校の伝統を熱く語る上級生の話を聞きながら、美幸は先程感じた決意を、新たにしていた。 (柏木産業の、柏木真澄さん。見つけた。私の目標……)  それは、基本的にお嬢様育ちでまともに恋愛もした事がなかった美幸が、変な方向に入れ込む人物に遭遇した出来事であり、それがその後の彼女の人生を、大きく変える事になった。
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