第1章 運命的な再会

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 とある月曜日の朝。  毎週月曜に行われている所属部署毎の朝礼の為、企画推進部の面々が自分達のフロアに隣接したミーティング室に集合すると、机と椅子を寄せて空いたスペースの前方に、三人の課長が揃って何やら話し込んでいた。  一同が軽く挨拶を交わしながら続々と集まり、最後に部長の谷山が三人の人物を引き連れて部長室からやって来ると、定刻になった事を確認した彼が、第一声を発する。  続けて簡単な訓示や週内の予定などを述べた後、壁際に一歩下がって控えていた三人を振り返り、身振りで前に出る様に促した。 「それでは次に、初期研修を終えて、本日から企画推進部配属になった二人を紹介する。紹介したら簡単に自己紹介と、抱負を述べてくれ」 「はい」  揃って返答をし、前へと進み出た二人に頷いた谷山は、まず左端の男性に声をかけた。 「それでは最初に、一課配属の秋月康也君」  そこで指名を受けた人物が、一歩前に進み出る。 「はい、今ご紹介に預かりました、秋月康也です。宜しくお願いします。私の抱負は……」  そして無難に自己紹介を終え、拍手で歓迎の意を受けた彼が一歩下がって元の位置に戻ると、谷山はその隣の女性に声をかけた。 「次に、二課配属の藤宮美幸(ふじみやみゆき)君」  その声に従い一歩前に出た彼女だったが、谷山に恐縮気味に申し出た。 「すみません、谷山部長。私の名前の読みは『とうのみやよしゆき』なんです。読みにくくて申し訳ありません」  それを聞いた谷山は、軽く目を見開いて驚きの表情を浮かべたが、すぐに申し訳なさそうな表情に取って代わった。 「これはすまん、確認不足だった。以後気を付けよう」  率直に自分の非を認めた谷山に、美幸は笑って首を振りつつ答える。 「いえ、必ず一回は間違えられますので、気にしていません。その代わりに、誰にでも必ず一度で名前を覚えて貰えるので、寧ろ得をしています」  それを聞いた谷山は、思わず笑いを誘われた。 「ははっ、なるほど。しかし苗字はともかく、名前の読みが『よしゆき』とは特殊だね。ご両親には、何か特別な思い入れでもある名前なのかい?」 「はい、これは父の悲願だったので」 「と言うと?」  何気なく問い掛けた内容だったが、美幸に重々しく言われてつい興味を引かれ、問いを重ねた。すると美幸が真顔で説明を始める。
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