運転手

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男はすぐに無線を左手に取りボタンを押す。 「103どうぞ」 車番を叫ぶと、 『103、○○駅西口南側の通りを右へ曲がり、三本目の通りで山田さんがお待ちです』 オペレーターの指示が鳴る。 「了解」 男は返事をすると、すぐさま車を反転させ駅の西側へと向かわせた。 「今日は暇だったからなぁ…… 最後の客が遠距離でありますように」 ブツブツと願いを込めながら、細い道をスイスイと通り抜けて行く。 「だが、あんな辺鄙な場所に客なんて珍しいな」 ネオンの灯りはどんどん遠くなり、細くなった道は山へ向かって延々と続いている。 民家も無くなり、数百メートル走ったところでヘッドライトが人影を照らした。 その横へと静かに車を付け、自動ドアを開ける。 左後部へ顔を傾け、開いたドア向こうの人物を確認して尋ねる。 「山田さんですか? 」 人影はコクっと愛想無く頷いた。
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