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男は右手を翳して自動ドアを開け、店内へと入って行く。
外より遥かに光り輝く店内には、様々な音楽や機械音がけたたましく彼方此方で鳴り響いている。
男はゆっくり歩を進め、両隣に誰も座っていないスロットの席へと座った。
首は動かさず、目だけで店員の位置を確認する。
目立たないよう自然に振る舞う事も身に付いていた。
財布からお札を取り出す振りをし、コインを購入する振りをする。
ありもしないコインを右手で掴み、滑らかな動きで投入口へと指を運ぶ。
空を摘んでいる指を離すと同時に、長袖のシャツから細長く平べったい棒が飛び出してくる。
それを器用に投入口へ差し込むと、【0】だったコイン表示が【50】へと変わった。
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