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雪と冬馬の家はお隣。
家の前で別れ、家に入るとリビングから母の声と足音が聞こえてきた。
『ラブちゃんおかえりー』
「…ただいまぁ」
『ケーキ焼いたから、一緒に食べましょ?ね!ほら、着替えてらっしゃい』
恋心を知りたいのに知れなくて悩み始めた中学時代から、母は毎日のようにお菓子を用意してくれてる。
何があったのか決して聞くわけじゃないけど、その優しさに胸がチクリと痛んだ。
〔…孫の顔見せれないかもしれないのに、はぁ〕
部屋着になりリビングに行くと、ガトーショコラをちょうど切り分けてる母が居た。
「飲み物用意するね?」
『ん?あら、ありがとぉ』
台所で紅茶を入れようと茶葉を手にする。
そして、砂糖・牛乳を用意しようと冷蔵庫を開けたら
「あれ?ママ、牛乳ないよ?」
『え?嘘ぉ!買い忘れちゃったんだ…』
「買ってくるよ」
『ごめんね、じゃあお願いしまぁす』
そう言って千円札を渡された。
Tシャツに中学時代のジャージ姿。
牛乳買うだけだし、いいや。と、その格好のまま近所のコンビニへやってきた。
〔牛乳、牛乳…っと。あ、私の大好きなボロくまさん!〕
店内に飾られてたボロくまの絵が描かれたお皿に目を奪われる。
対象商品についたシールを30枚集めるともらえるっていう説明が、お皿の傍に添えてあった。
店内をグルッと見渡し、シールがパンについてるのが見える。
〔パンかぁ。帰ったらケーキあるけど、買ってっちゃおうかな…〕
物欲があまりなく普段からお金は使わないけど、このボロくまだけは別で誘惑に心が揺れる。
〔ママ怒るかなぁ?…でも、あのお皿欲しいし…よし!買っちゃう!〕
明日の学校の昼食、もしくは小腹がすいた時用と思って菓子パンではなく総菜パンをとろうと手を伸ばした瞬間。
―ピトッ
誰かと手が触れる。
ハッとして、その手の主を見ると仕入れたパンを並べようとしていた店員だった。
『あっ、すみません』
男性にしては少し高い声に、首を傾げながら優しく微笑む顔。
体中に電気が走るような感覚がきたと思ったら徐々に顔が熱くなって鼓動が早くなっていく。
〔え、なにこれ…!?〕
初めての感覚に戸惑いながらもパンを手に取り、その場を去ろうとするとパンが入った番重に足を躓いてしまう。
「わっ!」
転びそうになると、隣で作業していた彼の服を咄嗟に掴んでしまった。
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