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『大丈夫ですか?』
一瞬驚いたような顔をしたけど、微笑みながら言う彼。
雪と冬馬を美男美女姉弟だと思っていたけど、次元が違う。
ワックスで遊ばせた髪に、漫画に出てくる王子様のような顔。
『?』
服を掴んだまま見惚れてしまってる私をキョトンとした顔で見つめてくる。
「あ、あの…すいませんでした!」
慌てて手を放し、レジにて会計中。
ずっとうるさい鼓動の奥がゾクゾクなんともいえない感覚。
会計中ずっとパンコーナーをチラチラ気にするが、死角で彼の姿は見えない。
うるさかった心臓はおさまり、あぁーあ…って残念がる自分が居る。
肩を落としコンビニを出て再度チラッっと見ると、空の番重を押して外に出てきた。
―トクン、トクン、トクン…
また早くなる鼓動に胸をかきむしりたくなるような感覚に陥った。
さっきから気持ちが上がったり下がったり忙しい事に気付くと
―ある日
突然
雷が落ちたかのように…
雪の言葉が頭の中で繰り返される。
〔これが、恋?…恋、コイ、こい…私とうとう恋しちゃったんだー!!〕
ゆっくり歩きながらバレない程度に彼を視界におさめ、店に入ってくのを確認する。
〔帰ったら2人に報告しなくっちゃ!〕
鼻歌交じりで帰ると、リビングで待つ母の元ではなく部屋へとむかう。
学校鞄に入れっぱなしだった携帯をとりだし、雪と冬馬のグループトークにメッセージを送った。
≪私、ついに恋をしちゃいました!≫
帰って来て早々部屋にこもる私を心配して母がリビングから叫ぶ。
『ラブちゃーん?どうしたのー?』
「あ、なんでもなーい!今行くー!」
『あら、なんかいい事でもあったの?』
「へへ、なーいしょっ!」
数年ぶりにイキイキとした表情をしてる娘に母は、ようやく悩みが晴れたのかと密かに安心していた。
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