お母さん

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父を失った私にはあなたしかいなかった。 あなたしか。 だけど脳の病であなたは幼児化してしまったんだ。 本能には忠実で、嫌なことは絶対しない。 それでもされそうになるならば、泣いて、泣いて、駄々をこねた。 それでも私にはあなたしかいなかった。 あなたしか。 退院したあなたと並んで歩きたかったんだ。 みんな母と手を繋ぎ買い物をしてるんだよ?だから… 杖がなきゃ歩けないあなたは歩くことを嫌い 当時流行ってたプリクラを一緒にとりたくてお願いしたら 杖を投げて泣いたよね。 思い返せば、私の為に何かしてくれたかな? 少しのお願いもダメだっていうの? 甘えたい年頃の私にはあなたが必要だった。 だけど、いなかった。 「お母さん」なんて、どこにも。
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